『PTA再活用論 悩ましき現実を超えて』

これは良心あふれる本です。
   http://www.chuko.co.jp/new/2008/10/150294.html
体験を踏まえて、考えて、悩んで、書かれています。
現場の「苦しみ」をちゃんと取材している。
連載されていた雑誌(婦人公論)の読者とのやりとりもある。
1年間の連載が終わったのは今春、加筆し構成して、新書の形で刊行されたのが今秋。
知的業績、満身満心総動員の力作、です。
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昔でいう「自己開発セミナー」や昨今の「エンカウンター」に近似する側面(≒擬似宗教の持つ洗脳性)のあるPTAを、
「やれば楽しいPTA! やってよかったPTA!」
と、おめでたくも軽佻浮薄に総括する類いの、体験者が書いた凡百本(多いんだよそういう軽薄本がPTA関連には)では全然ない。
PTAに巻き込まれて憤慨・困惑している関係者(保護者や教員)や、現状に疑問を持つ教育委員会関係者(教育委員や事務方の役人)の中で、ある種のフォークセンス(民衆感覚)とロックスピリット(反骨精神)を備えた、心ある方々なら、読んで光明を感じるだろう。
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校長はじめ中間管理職系教員とPTA会長連中も、基本的に、読めば得るものがあろう。
…後者の読書習慣に軽く不安はあるけれど。
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地方議会や国会で議員やってるPTA会長は読んでも解らないかもしれない。
議員兼PTA会長の殆んどは倫理観と遵法精神とリテラシーが無いに等しいから。
…ま、連中には、読めるモンなら読んでみなってところ。
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今世紀の始め頃、PTA関係の人と話していて「音楽の趣味はロック系です」とおっしゃるので「たとえば?」と尋ねると「アルフィ~とかグレ~とか」という答えを頂戴した。
オイラ思わず「それってどっちも演歌ですよ!!」と言ってしまった。
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強制に甘んじる人とか自発的隷従癖のある人とかがPTAには不思議と多かった。出る杭を打ち出過ぎる杭を抜くような風潮に怯えているようにも見えた。
…いや、不思議じゃないか。
そして、新聞を読まないのか、怖ろしいことに、当節の文部省/文科省の進める学校教育や社会教育の情報を知らない人がPTA上層部には多かった。知らなきゃ知らないで、動物的勘や皮膚感覚で「何だか、学校もPTAも、ウザくてキモい」と意思表明すりゃあ宜しかろうに、そんなふうでもなかった。
…いや、怖ろしいことでもないか。
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「ウザい」とか「キモい」という言葉を流行らせた年代が子育てに奮励する頃になっても、日本のPTAは奇妙奇天烈な、人権侵害的――「虐待の連鎖」と評せる点が日本のPTA(小から大まで、つまり単体から連携体まで)の基本構造にはある――な、常態のままで、存在しているのだろうか?
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ま、趣味が演歌ロックでない連中の成長に期待してみようか。